岩の見分け方
産地一覧の点数は、地質図の凡例に書かれた岩相から付けています。 石灰岩が +48、珪藻質・珪質堆積岩が +40、石炭・炭質層が +40 と高いのは、 どれも生き物の遺骸そのものが岩になっているか、それに近いからです。 ではその岩が現地でどう見えるのか、というのがこのページです。
見た目だけでは決まらない
灰色の泥岩と灰色の凝灰岩、白い石灰岩と白い珪藻土は、写真では区別がつきません。 現地でできる手当てを組み合わせて絞り込みます。順番は、外れにくいものからです。
それぞれの岩
石灰岩(+48)
白〜灰色。希塩酸をかけると音を立てて泡が出ます——これが決め手で、 他の岩ではまず起きません。サンゴやフズリナ、貝の殻が集まって岩になったもので、 化石を「含む」というより化石が岩を作っています。 風化した面は、雨で溶けて細かい溝が刻まれます。
希塩酸は薬局で買えますが、皮膚と目に危険です。持ち歩くなら 小さな点眼容器に薄めたものを入れ、保護メガネと一緒に使ってください。 食酢でもわずかに泡が出ることがあります(反応は弱く、時間がかかります)。
珪藻質・珪質堆積岩(+40)
珪藻土は白っぽくて軽く、水を吸います。濡らすと表面に染み込んで色が変わり、 乾くとまた白くなります。もろく、指でも欠けます。珪藻という微生物の殻が 積もったもので、同じ層に葉や魚の化石がきれいに残ることがあります。
同じ「珪質」でもチャートは正反対で、ナイフの刃で傷がつかないほど硬く、 割れ口が貝殻の内側のようになめらかに湾曲します。赤・緑・黒など色が濃く、 薄い層が積み重なって見えます。放散虫やコノドントは肉眼では見えません。
石炭・炭質層(+40)
黒くて軽く、手や紙が黒く汚れます。植物が積もって固まったもので、 炭層の上下にある黒い泥岩(炭質頁岩)には、葉の形がそのまま残っていることがあります。 石炭そのものより、その周りの泥岩のほうが化石は探しやすいです。
恐竜はどこに入るか
上の図には恐竜が出てきません。恐竜は「岩相」ではなく「時代と環境」で決まるからです。 日本で恐竜化石が出るのは、白亜紀の陸でたまった地層——川や湖の底に積もった 砂岩・泥岩・礫岩です。海でたまった地層からはほとんど出ません。
つまり、図で言えば「泥岩・頁岩」か「上のどれでもない(砂岩)」の枠に入り、 そのうえで時代が白亜紀のもの、ということになります。岩を見ただけでは 区別がつかないので、地層の時代を見る必要があります。産地ページと産地一覧で 時代を「白亜紀」で絞るのがいちばん早いです。
石川県白山市の桑島層、福井県勝山市の北谷層、熊本県の御船層群などが知られています。 どれも点数の上では石灰岩に及びませんが、恐竜が出るのはこちらです。 点数は「化石が出るか」の目安であって、「恐竜が出るか」の目安ではありません。
泥岩・頁岩(日本でいちばん多い)
点数の上では石灰岩ほど高くありませんが、日本で貝や葉の化石が出る産地の多くは これです。灰色〜黒。爪で傷がつくものもあります。特徴は割れ方で、 層の面に沿って板状にはがれます。はがした面に化石が現れます。
硬さで挟み込む
道具が無くても、身近な物で傷がつくかどうかを見れば絞り込めます。 硬い物で柔らかい物には傷がつきます。
下の図の数字はモースの硬さという、傷のつきにくさを1から10まで並べた目安で、 数字が大きいほど硬くなります。1が滑石(爪で削れる)、 10がダイヤモンド。等間隔の物差しではなく、順番だけを表しています。
使い方は簡単で、手元の物で岩に傷がつくかを試すだけです。爪(2.5)で傷がつけば かなり軟らかい岩、銅貨(3.5)で傷がつくが爪では無理なら石灰岩あたり、 ナイフ(5.5)でも傷がつかなければチャートのような硬い岩、と挟み込めます。
傷をつけるのは、標本にしたい面ではなく裏や角で。 また、傷に見えるものが金属の付着(銅貨をこすった跡)であることがあります。 指でこすって消えるなら傷ではありません。
そのほか現地でできること
- 叩いた音。チャートや緻密な石灰岩は高く澄んだ音、泥岩や凝灰岩は 鈍い音になります。同じ露頭で叩き比べると差が分かります。
- 水のしみ方。水滴をたらして、すっと消えるなら多孔質(珪藻土・凝灰岩・ 風化した砂岩)、玉のまま残るなら緻密(チャート・緻密な石灰岩)。
- ルーペで粒を見る。角ばったガラス質の粒が見えれば凝灰岩、 丸みのある石英粒なら砂岩。粒が見えないほど細かければ泥岩です。
- 重さ。同じ大きさで持ち比べると、珪藻土と凝灰岩は明らかに軽いです。
点数が低くても出ることがあります
付加体のチャートは点数では C 級ですが、放散虫の研究では主役です。 逆に点数が高くても、その地点が崖の内側で近づけなければ意味がありません。 点数は行き先を絞る手がかりで、現地の判断はこのページの手当てで行ってください。
ほかの解説
- 採ってよい場所かどうか — 権利・許可・採った化石は誰のものか
- 安全 — 崖・増水・熱中症・クマ
- 道具 — 何から買えばよいか
- ノジュール(団塊)の見分け方 — 化石が入っている石のかたち
- 石の割り方と、割らない判断 — 見つけたあとの、いちばん失敗しやすいところ
- 記録の取り方 — その化石を価値あるものにするもの