ノジュール(団塊)の見分け方
ノジュール(団塊・コンクリーション)は、泥や砂が固まる途中で、 生き物の遺骸などを芯にして、その周りだけが硬く固まった石の塊です。 中に化石が入っている確率が高く、周りの岩より硬いので、風化した露頭では浮き出て見えます。 なぜ化石が入るのかが分かると、探す場所も、割ってよいかどうかも決まります。
ノジュールとは
海底や湖底に沈んだ生き物の遺骸が腐ると、その周りだけ水の性質が変わり、 炭酸カルシウムや炭酸鉄が沈着します。化石を芯にして、その周りに石が育つわけです。 大きさは数センチから2メートルまで、形は球・楕円・扁平とさまざまです。できかたから、 次の3つが決まります。
- 中心に化石が入っている(芯が化石以外のものもあります)
- 周りの泥岩より硬いので、風化すると母岩から浮き出る
- 同じ時期に埋もれたものなので、同じ層準に並んで出る
硬さの差は、露頭でそのまま形になって現れます。周りの泥岩が削れても団塊だけが残り、 崖の下に球のまま転がります。

元がどこにあったかは、崖の面を見ると分かります。同じ高さに並んで顔を出しているのが、 その団塊が入っている層です。探すときは高さではなく、この面に沿って横へ追います。

ノジュールの見分け方 — ただの石との違い
拾う前に、割らずに判断できる手がかりが6つあります。上から順に、道具なしで確かめられます。
| 手がかり | ノジュール | ただの礫 |
|---|---|---|
| 形 | 丸みのある塊、やや扁平。表面はざらついて一様 | 角ばるか、川で磨かれて均一に丸く、表面に光沢が出る |
| 母岩との関係 | 周りの泥岩に包まれている。層が団塊を避けて曲がる | 周りと無関係に転がっている。同じような丸石が集まっている |
| 色 | 母岩と違う(褐色・灰白色に風化することが多い) | さまざま |
| 硬さ・音 | 母岩より硬く、叩くと高い音 | — |
| 希塩酸 | 石灰質なら泡が出る | 石灰岩礫でなければ出ない |
| 断面 | 同心円状の構造。中心に色の違う芯 | 均質、または砂粒が見える |
いちばん強い手がかりは2行目です。母岩に包まれているものは、 その場で作られた団塊です。転がっている石は、どこか別の場所から運ばれてきた可能性が残ります。
実物を見る — 割る前と割った後
まず、割る前がどう見えるかです。角が取れた丸い塊で、層がありません。 表面はざらついた一様な質感で、ふつうの礫のように磨かれてはいません。 この個体は縁にアンモナイトの断面が顔を出しています。

下は同じく割る前の菱鉄鉱(りょうてっこう)ノジュールです。表面に貼ってある番号は 博物館の標本番号で、石の一部ではありません。平たい円盤の形は、この種類の団塊によく出ます。

次が、同じ石の割る前と割った後です。上が割る前、下が割ったところ。 左が外側の型(外形が写し取られた面)、右が化石そのもの。 2つに割ると型と本体の両方が手に入りますので、片方だけ持ち帰らないでください。

植物でも同じことが起きます。下は割った両面にシダの葉が出た例です。 左右は同じ1枚の葉の表と裏で、別々の化石ではありません。

当たりのノジュールでは、1つの面に複数の個体が並んで出ることがあります。 同じ時に同じ場所に埋もれたものが、そのまま固まっているからです。

団塊の中では、殻も骨も持たない生き物が残ることがあります。周りの泥が押しつぶす前に 石が固まるので、体の形がそのまま写ります。下は環形動物(ゴカイの仲間)です。 泥岩の平らな面ではまず残らないものが、団塊の中でだけ残ります。

ノジュールの種類 — 中身も割れ方も違う
「ノジュール」は形の呼び名で、中身の鉱物は1つではありません。 何でできているかによって、入っている化石も、割ったときの割れ方も、 持ち帰ったあとの扱いも変わります。
| 種類 | 見た目・手ざわり | 入りやすい化石 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 石灰質(炭酸カルシウム) | 灰白色〜褐色。希塩酸で泡が出る | アンモナイト、二枚貝、巻貝 | 層に沿って素直に割れる。もっとも扱いやすい |
| 菱鉄鉱(炭酸鉄) | 褐色〜赤褐色に錆びる。同じ大きさの石より重い | 植物、昆虫、クラゲやゴカイなど軟らかい体 | 平たい円盤状。凍結と融解を繰り返すと自然に開く |
| 黄鉄鉱・白鉄鉱(硫化鉄) | 割ると金属光沢。ずっしり重い | 小さな殻。化石が黄鉄鉱に置き換わることもある | 湿気で崩れる。乾燥剤と密閉し、他の標本と分ける |
| チャート・フリント(石英) | ガラスのような光沢。非常に硬い | 海綿の骨片、放散虫、ウニ | 貝殻状に鋭く割れる。破片が刃物になる |
| 燐酸塩 | 黒く緻密。層状に色が変わることがある | 骨、歯、糞石 | 硬く、中身が見えにくい |
| セプタリア(亀甲状) | 表面に亀の甲羅のような割れ目。隙間を白い方解石が埋める | 入っていないことが多い | 割っても方解石の脈が出るだけのことが多い |
表と同じ順で実物を並べます。同じ「ノジュール」でも、色も光沢も割れ方も違います。






持ち帰る前に知っておくこと
- 硫化鉄(黄鉄鉱・白鉄鉱)は湿気で崩れます。崩れるときに硫酸を出して 周りの標本やラベルを傷めますので、持ち帰るなら乾燥剤と一緒に密閉し、 他の標本と分けて保管してください。
- チャート・フリントは鋭く割れます。海綿の骨片が溶けて集まったもので、 割れた縁は刃物になります。素手で扱うと切れますので、軍手か手袋を使ってください。
- セプタリアには化石がまず入っていません。固まったあとに内部が縮んで割れ、 その隙間を方解石が埋めたものです。見栄えはしますが、化石を目当てに割ると空振りします。
どんな地層から出るか
団塊ができるのは、細かい泥がゆっくり積もり、その中で有機物が分解された場所です。 したがって狙うのは砂利や溶岩ではなく、海でたまった泥岩・頁岩、そして石炭に伴う地層になります。 逆に、花崗岩の山や、川が運んだ礫だけの河原では、そもそもできません。
日本で、団塊が論文に記録されている地層
このサイトが持っている産地データと地層の論文から、団塊・コンクリーションが 実際に報告されている地層を挙げます。産地の一覧はそれぞれのリンクから開けます。
| 地層 | 場所・時代 | 報告されている団塊 |
|---|---|---|
| 蝦夷層群 | 北海道・白亜紀 | アンモナイトを含む石灰質団塊。日本でもっとも知られた産出 |
| 双葉層群 | 福島県・白亜紀 | 大型アンモナイトの密集層と、巨大な炭酸塩コンクリーションの濃集層 (大森ほか, 2023・地質学雑誌) |
| 青木層・ 別所層 | 長野県・中新世 | 大きな苦灰石ノジュール(石田・森清, 2015)と、 層状の燐酸塩ノジュール(森清, 2016・地球科学) |
| 名洗層 | 千葉県銚子・鮮新世 | 石灰質団塊の礫。中からジュラ紀〜白亜紀の放散虫が出た (柏木ほか, 2013・地質学雑誌) |
| 新里層 | 沖縄県・更新世 | ドロマイト・コンクリーション。メタンの分解に伴ってできたもの (松本ほか, 2022) |
団塊が報告されていない地層でも出ないとは限りません。ここに挙げたのは 「論文で名指しされている」ものだけです。ほかの地層は 都道府県から、あるいは地図で泥岩の分布を見て探してください。
北海道の白亜紀の地層からは、下のような巻き方の変わったアンモナイトが出ます。 どちらも化石の下に黒い母岩の塊が付いたままで、これが団塊の残りです。 きれいに全部落とさず母岩を残すのは、産状を保つためでもあります。


大きさの上限は、想像よりずっと大きいです。ニュージーランドの海岸にある団塊は 直径2メートルに達します。中身の作りは手のひらに載る団塊と同じで、 中心から外へ向かって育っています。

ノジュールに似ているが違う石
丸くて硬い石がすべて団塊ではありません。現地で拾い上げる前に、 下の5つは切り分けられるようにしておくと、荷物が軽くなります。
| 紛らわしいもの | 正体 | 見分けかた |
|---|---|---|
| 川原の丸い石 | 運ばれてきた礫 | 表面に磨かれた光沢。同じような丸石がまとまってある。母岩に包まれていない |
| 玉ねぎの皮のような石 | 火成岩などの球状風化 | 同心円状に薄い皮がむける。周りも同じ岩で、層が無い |
| 振ると音がする石 | ジオード(晶洞) | 見た目より軽い。割ると中は空洞で結晶が並ぶ |
| 泡だらけ・ガラス質の塊 | スラグなど人工物 | 気泡が多く、ガラスの光沢。工場跡・鉄道沿い・埋め立て地に多い |
| 亀甲模様の石 | セプタリア | 表面の割れ目を白い方解石が埋めている(前の節を参照) |




紛らわしいが、こちらは当たり
表面がひび割れた、丸くも角ばってもいない塊は糞石(コプロライト)のことがあります。 見た目は地味ですが化石です。中に食べたものの破片が残っていることがあり、 当時の食べ物が分かる資料になります。

拾う前に見るところ
- 表面に化石が顔を出していないか。アンモナイトの巻きの一部や、 貝の断面が表面に見えていることがあります。見えていれば中身はほぼ確実です。
- ひび。すでに割れかけているものは、そこから開きます。
- 層に沿って追う。1つ見つかったら、その団塊が入っている層を横へ たどります。層は水平とは限らず、傾いていることのほうが多いので、 高さではなく層の面に沿って探します。上下に探すより効率がよいです。
全部に入っているわけではありません
芯が無い(あっても分解して残っていない)ノジュールも多く、割っても 何も出ないほうがふつうです。10個割って1つ当たれば良いほうと考えておくと、 落胆せずに済みます。空振りのノジュールを何十個も持ち帰ると重いだけなので、 現地で判断してください。
ノジュールの割り方
割り方と、割らないほうがよい場合は 石の割り方と、割らない判断にまとめてあります。 表面に化石が見えている石は現地で割らないなど、取り返しのつかない判断が先に来ますので、 ハンマーを出す前にそちらを読んでください。 どこへ行くかを決めるところからであれば、産地一覧と 地図、採ってよい場所かどうかは 採ってよい場所かどうかにあります。
よくある質問
- ノジュールとは何ですか。
- 泥や砂が固まる途中で、生き物の遺骸などを芯にして、その周りだけが硬く固まった石の塊です。 団塊・コンクリーションとも呼びます。中に化石が入っている確率が高い石です。
- ノジュールとただの石はどう見分けますか。
- いちばん強い手がかりは、周りの泥岩に包まれていて、層が団塊を避けて曲がっていることです。 ほかに、周りより硬く叩くと高い音がする、母岩と色が違う、石灰質なら希塩酸で泡が出る、 という手がかりがあります。川で磨かれて光沢のある丸石は、たいてい団塊ではなく礫です。
- ノジュールはどんな地層にありますか。
- 海でたまった泥岩・頁岩と、石炭に伴う地層です。日本では北海道の蝦夷層群、 福島県の双葉層群、長野県の青木層・別所層、千葉県銚子の名洗層、沖縄県の新里層などで 報告があります。花崗岩の山や、礫ばかりの河原にはできません。
- 割れば必ず化石が入っていますか。
- 入っていません。芯が残っていないものも多く、10個割って1つ当たれば良いほうです。 空振りの石は現地に置いて帰ってください。
- 黄鉄鉱のノジュールは持ち帰って大丈夫ですか。
- 湿気で崩れます。崩れるときに硫酸を出して周りの標本やラベルを傷めますので、 持ち帰るなら乾燥剤と一緒に密閉し、他の標本と分けて保管してください。
- ノジュールの割り方を知りたいのですが。
- 石の割り方と、割らない判断に、割る前の判断から順に書いてあります。 表面に化石が見えているものは、現地で割らず母岩ごと持ち帰るのが基本です。
ほかの解説
- 採ってよい場所かどうか権利・許可・採った化石は誰のものか
- 安全崖・増水・熱中症・クマ
- 道具何から買えばよいか
- 岩の見分け方点数の高い岩が、現地でどう見えるか
- 石の割り方と、割らない判断見つけたあとの、いちばん失敗しやすいところ
- 記録の取り方その化石を価値あるものにするもの